【動物学】チンパンジーとヒトの直立歩行の類似性
Nature Communications
2015年10月7日
チンパンジーが二足歩行する際に胴体を回転させる様子がヒトの二足歩行に似ているという意外な発見の報告が、今週掲載される。この研究報告は、チンパンジーに似た初期のヒトの祖先が、これまで考えられていたよりも効率的な直立歩行ができたと考えられることを示唆している。
ヒトの二足歩行は、臀部(骨盤)と上半身(胸部)の協調運動を特徴としている。つまり、ヒトが大股で歩く際には、臀部と上半身が相反する方向に動いて歩幅を広げており、腕の振りを利用して骨盤の回転を相殺している。これに対して、ヒトより腹部(腰部)がかなり短いチンパンジーは、二足歩行時に胴体(骨盤、腰部、胸部を含めた領域)を動かさないという仮説が提唱されていた。
今回、Nathan Thompsonたちは、運動学的解析を行って、ヒトだけでなく、二足歩行をするように訓練されたチンパンジーのこれら3つの身体領域(臀部、腰部、胸部)のそれぞれの動きを追跡した。その結果、ヒトとチンパンジーは、大股歩きをする時の上半身と臀部の位置関係が異なっているが、骨盤に対する身体領域の運動の大きさがほぼ同じであることが分かった。
これらの身体領域の運動の決定的な違いは、チンパンジーがヒトよりかなり大きく骨盤を回転させることだが、胸部の運動によって過剰な骨盤の回転を相殺するという機能が働く点は同じだった。この類似性から、ヒト族のアファール猿人(Australopithecus afarensis)がチンパンジーに似た骨格形態を持っていたことが二足歩行運動の妨げにならなかったと考えられる。また、この能力はヒト族の進化の初期段階に存在していた可能性が高いことも示唆されている。
doi:10.1038/ncomms9416
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