【微生物学】微生物培養のレシピ集
Nature Communications
2015年10月14日
大量の微生物と培養条件の情報が収録されたデータベースが構築され、新たな微生物培養に適切な培地のレシピを予測できるようになったという報告が、今週掲載される。このデータベースは、新たに培養される微生物の生物関連と生物工学関連の可能性に関する研究を促進することが期待される。
環境中や我々の体内に生息する微生物の大半は、実験室での培養が成功していない、いわゆる「微生物の暗黒物質」であり、ほとんど解明が進んでいない。今回、Matthew Oberhardtたちは、微生物を培養するための培地を作製するためのレシピを大規模リポジトリから抽出して、KOMODOというデータベースを構築した。このデータベースには18,049種の微生物に関する情報と3,335点の培地のレシピに関する情報が収録されており、実験室での微生物の培養の成否を決める諸原理に関する系統的な研究が可能になった。
今回の研究では、培地に特定の微量金属とビタミンを使用することが新たな微生物の培養にとって不可欠であることが多いという発見があった。また、近縁な微生物は同じような培地で増殖する傾向があるという未検証の有力仮説についても検証が行われた。その結果、Oberhardtたちは、KOMODOに収録された培地のレシピの中から新しい微生物の培養に適切なレシピを予測できるオンラインツール(GROWREC)を開発した。GROWRECは、既知の微生物の進化的関係に関する現在利用可能な知識とその微生物の遺伝的情報(16S rDNA塩基配列)を併用している。こうした遺伝的情報は、目的の微生物を含む環境試料や臨床試料から容易に入手できる。
Oberhardtたちが開発したデータベースとオンラインツールは、これまでに実験室内で培養されたことのない数多くの微生物の培養と研究に有益なものとなるだろう。今回の研究は微生物の栄養に関する科学の予測性を高めるという目標に向けた第一歩だとOberhardtたちは考えている。
doi:10.1038/ncomms9493
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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