ますます難解になるIPCC報告書と、マスコミ報道の充実
Nature Climate Change
2015年10月13日
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)評価報告書の政策決定者向け要約は、同報告書の中で最も分かりやすく、幅広く読まれている部分だが、読みやすさの評価が依然として低いことを指摘する新たな論文が、今週掲載される。これに対して、科学マスコミと同報告書の新聞報道は読みやすくなったとされる。
IPCCの評価報告書は5年に一度発表され、それに付属する政策決定者向け要約は、同報告書の大事な細部を要約して幅広い読者層に伝えている。近年、IPCCは、注目を集める評価報告書の誤った伝達を克服するため、IPCCのコミュニケーション戦略の改善を試みてきた。
今回、Ralf Barkemeyerたちは、5つの主要なIPCC評価報告書の政策決定者向け要約の言語分析を行った。この分析では、政策決定者向け要約に読みやすさの評価指標を適用し、タブロイド紙の一部(Daily Mail、The Mirror、The Sun)と高級紙の一部(New York Times、Washington Post、The Independent、The Times)に掲載されたIPCC評価報告書の記事だけでなく、科学論文誌NatureとScienceの社説とニュース記事との比較も行った。その結果、政策決定者向け要約は、回を重ねるごとに難解になっており、1990年に発表された第1次評価報告書以降、評価指標の値が低下を続けていることが明らかになった。これに対して、科学論文誌と新聞各紙によるIPCC評価報告書の報道記事の読みやすさは向上した。ただし、マスコミ報道の論調は、おおむねIPCC評価報告書自体よりも悲観的なものになっている。
doi:10.1038/nclimate2824
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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