ハリケーンによる米国の経済的損失は気候変動と関連性があるか?
Nature Geoscience
2015年10月20日
米国のハリケーンによる経済的損失が増加する傾向にあることは、一般的に引き合いに出されている脆弱性や危険状態の増加では説明することができないとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。損失の増加は、地球温暖化がハリケーンの数と強度に及ぼす影響と一致しており、この影響は2005年の米国のハリケーンによる損失の2~12%を説明している。
自然災害による経済的損失のうち、特にハリケーンによるものは過去数十年間に増加している。しかしながら、このような増加が、ハリケーンに対し脆弱な海岸地域で富と人口が増加したことなどの社会経済学的要因によるものか、あるいは極端気象現象が増加したことによるものかは論争となっている。
人工的な傾向を導入することによる危険性を最小化する統計的手法を用いて、Francisco Estradaたちは、1990年と2005年の間の米国におけるハリケーンによる経済的損失の増加に対する社会経済学的要因の寄与を見積もった。著者たちは、増加傾向の一部は、一般的に用いられる社会経済学的要因で説明することができず、おそらく地球温暖化の結果として、米国を直撃して損失を生み出したハリケーンの数と強度が増加したことと一致していることを発見した。著者たちは、2005年に受けた米国のハリケーンによる損失のうち20~140億ドルは気候変動に原因を帰すことができると見積もっている。
これに関連するNews & Views記事でSteephane Hallegatteは、この研究が「これまでほとんど無視されてきたハリケーンの経済的損失に対する気候変動の寄与に対する論争を再開させるだろう」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2560
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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