アルコール性肝硬変のリスクに関連する遺伝子バリアント
Nature Genetics
2015年10月20日
大量飲酒者が肝硬変を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子バリアントが見つかった。アルコール性肝硬変と非アルコール性脂肪肝に共通の遺伝的なリスク因子があることも明らかになった。
大量飲酒者の肝臓にはたいてい脂肪が蓄積されるが、そのうち肝硬変を発症するのはわずかで、アルコール乱用者の10~15%だ。アルコールの乱用による肝硬変の発症リスクに遺伝子が関与していることが過去の研究で明らかになっているが、これまでに同定されているのは、PNPLA3遺伝子に存在するバリアント1つしかない。
今回、Felix Stickelたちは、ヨーロッパ系の人々(ドイツ人、英国人、ベルギー人)を対象に全ゲノム関連解析を実施し、肝硬変を発症した長期の大量飲酒者(712人)と肝臓障害所見のない長期の大量飲酒者(1,426人)の遺伝学的な差異を比較した。さらに、得られた解析結果を、別の肝硬変の患者(1,148人)と肝硬変にかかっていない人(922人)で確認し、再現性が得られた。すなわち、PNPLA3遺伝子に存在するバリアントが肝硬変の発症リスクを高めることが確認され、新たに2つの遺伝子(MBOAT7とTM6SF2)に肝硬変のリスクバリアントが同定された。これら3つの遺伝子は、全て脂肪の代謝に関係しており、この経路がアルコール性肝硬変の発症に重要なことが示唆されている。
今回の研究で見つかった感受性遺伝子は、アルコール依存症に関連する遺伝子とは直接は関係せず、非アルコール性脂肪肝の感受性遺伝子と重なっている。Stickelたちは、こうしたリスク遺伝子は、アルコール性肝硬変と非アルコール性脂肪肝の両方の治療標的となる可能性があり、標的治療介入の対象となる高リスク集団を特定するためにも利用できると考えている。
doi:10.1038/ng.3417
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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