【生態】多様な農業景観が生物多様性を高める
Nature Communications
2015年10月21日
土地利用の多様性が高い農業景観では、生態系で非常に広範な役割を果たす無脊椎動物が生息できることを報告する論文が掲載される。この研究報告は、小規模な農地の集約化の効果よりも多様な景観を維持することの方が農業生態系の働きにとって大事である可能性が示唆されている。
1つの生態学的群集内で、複数の生物種の一部の生物学的形質(例えば、分散過程、生殖能力)が類似していることがある。また、群集内の形質の多様性が高い方が生態系の働きが優れており(例えば、栄養循環の効率性が高いこと)、環境の変化に対処する能力も高くなる可能性のあることが知られている。多様性が高いと、重要な生物がかく乱を生き延びる確率が高くなるからである。
今回、David Perovicたちは、この多様性を調べるためにドイツの農業景観に由来する約600種の36,000匹以上の無脊椎動物を収集し、群集を構成する動物の形質の類似性がその動物が存在する景観の影響をどのように受けているのかを調べた。その結果、土地利用の多様性(1つの地域における森林、草地、農地の割合)が低い地域と集約度の高い農業が行われている地域では、食性の特殊性がかなり低い大型無脊椎動物が優占することが明らかになった。
従って、景観のモザイク性を単純化することと農地規模を集約化することは、大型のジェネラリスト種を存続させる生態学的「フィルター」として作用し、提供できる機能の種類の点で無脊椎動物群集の同質性が高くなる。この新知見は、小型の無脊椎動物が提供する重要なスペシャリスト種の機能(例えば、特定の植物の花粉媒介)が、景観の単純化によって失われることを意味しており、生態系の働きを増進することを目指した管理体制が、単に農業の集約度を下げることよりも景観の多様性を高めることによって大きな利益を受けることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms9568
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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