Research Press Release

【生態】キングペンギンに見られる異常気象の影響

Nature Communications

2015年10月28日

大規模な異常気象がキングペンギンの採餌行動と個体数動態に直ちに影響することを報告する論文が掲載される。最上位海洋捕食動物の個体群が気候の突然の変化にどのように応答するのかを解明することは、この個体群に対する将来の全球的変化の影響を予測する上で役立つ可能性がある。

エルニーニョ南方振動のような異常気象は、生態系の食物網に影響を及ぼすことが知られている。また、南インド洋と大西洋では海面水温の不規則な振動によってダイポールモード現象が発生し、その際に2つの大規模な暖水塊と冷水塊が出会う。しかし、こうした海面水温の変動が南極前線での生態学的過程にどのような影響を及ぼすのかは分かっていない。南極前線とは、暖水と冷水の主要な環境的境界のことで、プランクトンと魚類の大きなバイオマスが存在している。

今回、Charles Andre Bostたちは、南インド洋において、衛星発信器を取り付けられたキングペンギンの採餌旅行を16年間追跡調査した。その結果、異常気象によって海面水温が摂氏1度上昇すると、南極前線の南限が約130 km移動し、キングペンギンが亜南極のクローゼー諸島の繁殖地から採餌のために移動する距離が大幅に延長することが明らかになった。

極端な気候の年には、南極前線が南へ大きく移動し、ペンギンの採餌旅行での平均移動距離が倍増し、その翌年のクローゼー諸島における繁殖個体数が34%減少した。将来の気候シナリオでは、南極前線がさらに南方へ移動する可能性のあることが予測されており、地域内の潜水捕食動物の存続に対する重大な脅威となる可能性がある。

doi:10.1038/ncomms9220

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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