【惑星科学】エンセラダスの地中深くで起こっていること
Nature Communications
2015年10月28日
土星の衛星の1つであるエンセラダスの核は、始原的な隕石の核に似ていると考えられるという実験結果を報告する論文が、今週掲載される。エンセラダスの南半球は地質学的に活動的で、熱水活動の観測結果に基づいて地殻より下の部分の状態をモデル化できるようになっていた。
エンセラダスの氷地殻内部に由来する氷粒子やシリカ粒子からなるプリュームが最近発見され、エンセラダスの地中深くで、現在、水と岩石の相互作用が起こっていることが示唆された。今回、関根康人(せきね・やすひと)たちは、シリカに富む微小粒子の生成のシミュレーションを行うため、観測されたプリュームと似た組成のガスで実験を行った。関根たちは、エンセラダスで観測された条件下で液体を実験的に生成し、それが蛇紋石やサポナイト(石鹸石)の形成に似ているという見解を示している。これらの鉱石は、始原的な隕石にも含まれている。もしエンセラダスの核がこうした始原的な組成になっているのなら、太陽系の歴史の非常に初期の段階でエンセラダスが形成された可能性が高い。また、この反応条件からは、水素の生成が起こっていることが示唆されており、これが地表下に生息する生物にとってのエネルギーとなっている可能性がある。
2016年後半になると、土星を周回するNASAのカッシーニ宇宙探査機による最後のミッション(「グランドフィナーレ」)が始まり、2017年に燃料切れを起こすまでに同ミッションの中でも極めて大胆な飛行が行われる。エンセラダスに対する最終フライバイは、2015年の10月後半から12月にかけて行われる予定で、活動中の間欠泉の水を豊富に含むプリュームの中を通過することにもなっており、これが今回の研究成果の裏付けに役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms9604
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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