【応用物理】単一面からの超音波放射による音響浮揚
Nature Communications
2015年10月28日
音波を利用して、直径1 mm未満の微小な物体を制御された方法で浮揚させ、上下左右に移動させ、回転させたことを報告する論文が掲載される。また、この論文には、無容器輸送のためのいわゆる「トラクタービーム」に利用しうる音響構造(例えば、ピンセット、ツイスター、ボトル)が作り出されたことも報告されている。
超音波とは、人間の聴覚の限界より高い周波数の音波のことで、これを利用して空中、水中や生体組織内でさまざまな大きさと素材の物体を浮揚させることができる。つまり、細胞、液体、化合物や生物の操作を行う場合に、実物に触れることなく、コンタミネーションも起こさずに済むということだ。しかし、これまで音響浮揚を行う際には、音波を発する音響素子によって音波の放射目標物を取り囲む必要があった。
今回、Asier Marzoたちは、複数の音響素子から音波を発するタイミングが調整され最適化された超音波フェーズドアレイを使い、音響浮揚によって複数の直径1 mm未満の粒子を並進(面として移動)させ、回転させ、操作できることを明らかにした。この成果は、目標物を取り囲むのではなく、目標物の一方の側面に配置された片面アレイを用いて達成された。
この技術は、人体の内部にある粒子を操作することや標的型薬剤送達に役立つようになる可能性があり、強力なトラクタービームや3D物理ディスプレイの開発などの将来的な用途もある、とMarzoたちは考えている。
doi:10.1038/ncomms9661
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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