月形成時につまはじきにされた揮発性元素
Nature Geoscience
2015年11月10日
観測された地球と月の間の地球化学的な違いを説明できる可能性のある新しいメカニズムがオンライン版で報告される。
地球と月の間の化学的類似性は、両者が共通の起源、すなわち火星サイズの天体が原始地球に衝突したという理論を支持している。この仮説によれば、巨大衝突は地球の軌道に蒸発・融解した残骸の円盤を形成し、それが重力によって合体して月を形成した。しかしながら、月が形成された残骸の円盤には揮発性元素(カリウム、ナトリウム、亜鉛のように低温で容易に蒸発する元素)が豊富に含まれていたにもかかわらず、地球と比べると月はそういった揮発性元素が枯渇している。
Robin Canupたちは、衝突残骸円盤の進化の力学的シミュレーションを円盤の熱化学的進化モデルと関連づけた。月は最初、揮発元素が濃縮して合体するために十分に温度が低い、円盤の外側部分の物質から合体した。しかしながら、シミュレーションから、著者たちは、月の半分以上の質量は蒸気から揮発元素が濃縮するには温度が高すぎる円盤の内側部分の液相からできており、内側の円盤物質から集積した部分の月は比較的低い揮発性元素の存在度を示すことを発見した。
著者たちは、内側の円盤は最終的には揮発性元素が濃縮できるまで温度が下がったが、それは月の軌道が円盤から遠くに離れ、月の成長が終わった後だったことを示している。また、揮発性物質に富んだ円盤内側の物質は代わりに地球に集積したことを示唆している。
同時に掲載されるNews & Views記事で、Steven Deschは、「この結論は、月の揮発性物質の存在度をうまく再現する単一で包括的なモデルとなっている」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2574
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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