Research Press Release
がん研究:がんを標的とするナノ粒子を珪藻から作る
Nature Communications
2015年11月11日
珪藻は、光合成を行う微小な単細胞藻類で、外骨格がシリカでできている。今週掲載される論文では、珪藻を治療用ナノ粒子に利用できることが報告されている。
抗がん化学療法薬は、正常な組織にとって有毒なことが多い。この標的外毒性の問題を最小限に抑えるための方法として、抗がん化学療法薬を抗体被覆ナノ粒子の内部に隠すことができる。この抗体は、がん細胞に見られる分子だけと結合するため、有毒な抗がん化学療法薬を目標の細胞に特異的に送達できる。ただし、こうしたナノ粒子を生産するには多額のコストがかかる。
ナノ粒子サイズ(直径4~6マイクロメートル)の珪藻は、自然状態で、シリカでできた多孔質の被殻に包み込まれている。今回、Nicolas Voelckerたちは、被殻の表面上に抗体結合タンパク質を産生するような珪藻を遺伝子組み換えによって作製し、被殻をがん特異性抗体と結合させ、被殻に抗がん剤を吸収させた。そして、この珪藻ナノ粒子を培養ヒト細胞に加えたところ、がん細胞の90%が死滅し、正常な細胞には影響がなかった。また、腫瘍を有する4匹のマウスにこの珪藻ナノ粒子を注入したところ、腫瘍が退縮した。
珪藻は、ほぼ水と光だけで生育するために、治療用ナノ粒子の製造コストと製造に伴う有害廃棄物の発生を減らすことができ、低コストの治療法となることに期待が高まっている。
doi:10.1038/ncomms9791
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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