わずかなコストで米国内の旅客機からの二酸化炭素排出量を低減する方法
Nature Climate Change
2015年11月24日
航空機の設計の改善、航空輸送量の管理と航空会社の運行の改革によって米国の旅客航空会社による二酸化炭素(CO2)排出量を2012年のレベルから最大50%削減できる可能性があり、そのために航空会社が負担する費用がゼロか、非常に少ないことを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
世界の航空輸送によるCO2排出量は、年3.6%の増加ペースで推移している。そのため世界各国の政府と航空会社の協会は、CO2排出量の低減策を模索し始めているが、それに伴う経済的な費用と効果については十分に解明されていない。
今回、Andreas Schaferたちは、世界最大の航空輸送システムである米国の国内航空部門からのCO2排出量を抑制するための21の施策を検討した。Schaferたちは、このCO2排出量の大半を占めるナローボディ機(座席数100~189)に注目した。
今回の研究では、航空機の設計の改善がCO2排出削減の主たる駆動因子となる可能性があり、オープンローターエンジンと炭素繊維100%の機体によって航空機の効率が高まることが明らかになった。また、航空輸送量の管理と航空会社自体の運行効率のCO2排出削減に対する寄与度がそれぞれ約20%で、バイオマスからできた新しい合成燃料によってさらに10%の削減を実現できるとされる。そして、Schaferたちは、石油価格が1バーレル当たり50~100米ドルであれば費用効果が認められる施策を航空会社が行うことで、可能と考えられるCO2排出削減の少なくとも4分の3を達成できると報告している。
また、Schaferたちは、米国の国内航空部門のCO2排出量の全体が、保有機数に大きく依存している点を指摘している。航空機の台数は、現在、年1.5%の増加率で推移していると推定されているが、もしこれが年2%未満であれば、2050年のCO2排出量が2012年のレベルを下回る可能性があるが、年2.6%を超えると、今回の研究で評価されたCO2排出削減策全部を実施しても追いつかないとSchaferたちは結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2865
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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