Research Press Release

火星の自滅する月であるフォボスは火星に環を与える可能性がある

Nature Geoscience

2015年11月24日

火星の周りをまわる2つの月の1つは2千万年から4千万年後に分解して赤い惑星に環を与えることになるとの報告がオンライン版に掲載される。この研究は、その環が数百万年にわたり持続して結果的に土星の環と似た密度を持つことになると予測している。

火星の2つの月のうち大きい方であるフォボスは、徐々に地球かららせん状に遠ざかっていく我々の月とは違って、徐々に惑星の方に向かってらせん状に回っている。結果として、フォボスは火星の重力により増大する潮汐応力によって分裂するか、あるいは火星に衝突するかのどちらかであり、これは内側に移動していく月ではどれでも予想されることである。

Benjamin Black とTushar Mittalは観測データと地球工学的モデルを用いてフォボスの強度を計算し、月の大部分は弱い物質からできていることを発見した。Blackたちは、2千万年から4千万年後に十分な潮汐応力に達したときにフォボスは分解すると予測している。その後、分解した粒子は分散して火星の回りに環を作り、Blackたちはこの環が百万年から1億年の間持続すると見積もっている。またBlackたちは、十分に強いために潮汐で分解した際にそのままで残るような大きいフォボスの破片は全て、最後は火星に衝突してクレーターを作ると述べている。

現在は太陽系の外側の巨大ガス惑星のみが環を持っているが、この研究は火星も将来は環を持つことを示唆しており、この太陽系の内側へ移動していた他の月は大昔にどのようにして自ら破壊していったのかを垣間見せている。

doi:10.1038/ngeo2583

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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