大規模噴火による硫黄の環境への影響は弱かった
Nature Geoscience
2015年11月24日
洪水玄武岩噴出の際に放出される二酸化硫黄の環境への影響はこれまで考えられていたよりも限定的であるとの報告が、今週のオンライン版で発表される。
二酸化硫黄は気候寒冷化と、「酸性雨」を含む環境の酸性化をもたらすことが示されている。洪水玄武岩噴出の際に、最大で数百万立方キロメートルの溶岩が二酸化硫黄などの火山性ガスと共に数十万年にわたって噴出した。多くの洪水玄武岩の噴出は、大量絶滅事象と一致していて、大量の二酸化硫黄の放出が白亜紀―古第三紀、およびペルム紀末の大量絶滅に寄与した可能性があると示唆されている。しかしながら、最近の研究では洪水玄武岩の噴出、および二酸化硫黄の放出は間欠的で、数年から数十年の活動期とその後の静穏期を持つという特徴があることが示されている。
Anja Schmidtたちは、数値モデルを用いて、インドのデカン・トラップ(6500万年前)とアメリカ北西部でコロンビア川玄武岩を形成したロザ噴火(1450万年前から1650万年前)の2つの噴出時における間欠的な二酸化硫黄放出の環境への影響についてシミュレーションを行った。Schmidtたちは、硫黄がもととなった酸性の化合物が土壌と淡水系に堆積したにもかかわらず、噴火地点から遠く離れたほとんどの場所は、酸性化と長期にわたる被害に対して耐性があったことを発見した。さらに、二酸化硫黄の放出により生じた寒冷化からも、噴火が終わってから50年以内には気候は回復していた。Schmidtたちは、何世紀にもわたる個別の噴火のみが広範に継続する環境の影響をもたらし得たとの結論を出している。従って、Schmidtたちは、洪水玄武岩噴出時の二酸化硫黄放出による酸性化が全球の大量絶滅に大きく寄与したとは考えにくいと主張している。
doi:10.1038/ngeo2588
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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