【神経科学】乳幼児期の言語経験が脳に長期持続的な影響を及ぼす
Nature Communications
2015年12月2日
人生の初期における言語経験が、その後の人生における脳内での別の言語の音声処理に影響を及ぼすことを示唆する論文が掲載される。
生後1年間の脳は、五感を通して外界に関する情報を収集し、保存するように高度に調整されており、その時に接する言語の音声に適応し、その音声の神経表現が確立される。しかし、このような乳幼児期の経験が、その後の人生における第2言語の神経処理にどのような影響を及ぼすのかは分かっていない。
今回、Lara Pierceのグループは、43人の未成年者(10~17歳)にフランス語の偽単語(例えば、‘vapagne’や‘chansette’)を聞かせて、その後再び偽単語を聞いた時に応答するという内容の作業記憶課題を行わせて、その際の脳の活性を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって記録した。これら43人の参加者はフランス語を流暢に話し、次の3グループに分類できる。(1)中国語に接したことのないフランス語使用者、(2)フランス語を第2言語として流暢に話す中国人、(3)乳幼児期にフランス人夫婦の養子になり、フランス語のみを話す中国人。
いずれのグループも課題の成績は優秀だったが、脳の活性が異なっていた。中国語に接したことがなく、フランス語のみを使用する者は、言語関連の音声の処理に関与すると予想される脳領域の全てが活性化していたが、中国語に接したことのある者は、それに加えて認知制御と注意に関係する脳領域も活性化していたのだった。
以上の結果から、乳幼児期に中国語に接したことのある者が、フランス語だけを話す者と異なるやり方でフランス語を処理していることが示唆されている。
doi:10.1038/ncomms10073
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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