米国での気候変動論に対する反対運動の構造と影響
Nature Climate Change
2015年12月1日
人為起源の気候変動に関する科学的合意を否定する情報を生み出して広めている個人と団体が発するメッセージが報道機関に取り上げられる可能性は、その個人と団体が影響力のある企業やその他の法人との結びつきを持ち、その財政支援を受けている場合に高くなることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究は、米国民が気候変動について確信を持てなかったり、疑問を感じたりするようになる政治過程と社会過程を明らかにしており、こうしたことが他の先進国よりも米国に多い理由を説明する上で役立つ可能性がある。
今回の研究でJustin Farrellは、ネットワーク科学とコンピューターによるテキスト解析を用い、米国内の気候変動論に対する反対運動に関して、関連する組織と企業の構造に加えて、報道機関と政治家に対する影響力を解明した。Farrellは、反対意見のプロモーションに関与する4,556人の個人と164の団体によって構成された組織的社会的ネットワークを構築し、内国歳入庁のデータを用いて、1993~2013年にこのネットワーク内で法人後援者から資金を受け取った団体を割り出した。
また、Farrellは、気候変動論に対する反対運動が報道機関と政治家に及ぼす影響を明らかにするために、コンピューターによるテキスト解析を用いて、1993~2013年に反対運動を行う団体が作成した40,785点の文書と同じ期間中の大手報道機関3社(ニューヨークタイムズ、ワシントン・タイムズ、USAトゥデイ)、米国大統領、米国議会の気候変動に関する全ての書記テキストと口頭テキスト(約25,000点の文書)を比較した。
その結果、企業やその他の法人と結びつきを持ち、その財政支援を受けている団体は、そうしたコネを持たない団体よりも、報道機関にメッセージを取り上げてもらえる可能性が高い(テキスト類似性スコアが高い)ことが明らかになった。今回の研究結果は、科学の民営化、科学的論点をめぐる企業のロビー活動の影響とその延長線上にある米国での企業への富の集中に対して幅広い影響を及ぼすとFarrellは結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2875
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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