気候変動のために予算を組む
Nature Geoscience
2015年12月8日
パリで開催されているCOP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で、加盟国は、全球の気温上昇を産業革命以前から2℃以下に限定する排出目標の合意を目指して交渉しているが、今週のオンライン版に発表されたPerspective記事では、この目標は広く受け入れられていると考えられているにもかかわらず、科学的に評価されたことも立証されたこともないと報告されている。Reto Knuttiたちは、2℃の気候目標に対する批判を提示しており、個別の温度目標を議論するのではなく危険な排出を削減することに注意を払うべきだと論じている。
温度目標に関係なく、産業と化石燃料の燃焼による全球の二酸化炭素排出の急速な増加は2000年以降顕著に減速しているか、あるいは過去2年間には減少さえしていることを示唆する証拠がある。Nature Climate ChangeのCommentary記事に提示されたデータによれば、経済成長が継続しているにもかかわらず、それは起きているようである。Robert Jacksonたちは、排出が経済成長と関連していないことは、新興および確立した経済の多くが石炭を用いることから離れ、再生可能エネルギー資源を用いる方向に変化していることが原因である可能性があると示唆しており、この排出に関する傾向は継続することが示唆されている。しかしながら、Jacksonたちは、今後数十年間にわたる、特に中国における排出の不確定性は、年間の全球排出量の最大値に既に到達したのかどうかを断定することを困難にしていると注意を促している。
大気中から温室効果ガスを取り除く技術(負の排出技術[negative emissions technologies; NETs]として知られる)に、このような排出削減に果たす主要な役割を依存することは危険性の高い戦略であると、Nature Climate ChangeのReview記事が言及している。Pete Smithたちは、さまざまなNETsの潜在的な危険度と状況を評価し、可能なかぎり早く排出を積極的に削減することを目指すことが最も安全な戦略であると示唆している。
Nature GeoscienceのCommentary記事では、James ThorntonとHoward Covingtonが、気候変動訴訟はこのような戦略を実現するための役割を果たす可能性があると示唆している。過去の関連した訴訟事例を用いることで、Thorntonたちは、将来、気候変動の大きな要因となる者に対し温室効果ガス排出を制限する裁判所命令を導くことが可能となる方法について説明している。
最後に、Nature Geoscienceの別のCommentary記事で、Katharine Rickeたちは、比較的小さなレベルでの温暖化により気候変動の影響が急速に増大するが、温度が継続して上昇すると影響が緩やかになるか止まってしまうようなセクターには、大規模で早期の気候変動低減が重要であると論じている。
これらの記事は、Nature GeoscienceとNature Climate Changeが合同で行う「気候変動のための予算編成」をテーマにしたオンライン特集の一部であり、COP21に合わせて発表されたNature Publishing GroupのCommentary、Review、News記事のオンラインコレクションに加えられる。
http://www.nature.com/ngeo/focus/budgeting-for-climate-change/index.html
http://www.nature.com/nclimate/focus/budgeting-for-climate-change/index.html
doi:10.1038/ngeo2595
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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