【健康】肥満マウスをスリムにする新規化合物
Nature Communications
2015年12月16日
肥満マウスの腸細胞に作用して体重を減らす効果のあるグリシン-β-ムリコール酸(Gly-MCA)という新しい化合物について報告する論文が、今週掲載される。Gly-MCAは、エネルギー代謝の重要な調節因子である胆汁酸受容体FXRの作用を選択的に抑制するため、肥満関連代謝疾患の治療法の新規開発に役立つ可能性がある。
胆汁酸は、腸内で分泌され、腸細胞のFXR受容体に結合して、さまざまな代謝機能を果たす。FXRを標的とする抗肥満薬の開発は難しい課題となっている。FXRシグナル伝達の影響は、FXRが発現する組織によって代謝に有益な影響となったり、悪影響になったりするからだ。
今回、Frank Gonzalezたちは、胆汁酸を用いて、腸内細菌によって分解されにくく、血液中にわずかな量しか取り込まれない薬を生成した。この薬は、腸細胞で発現するFXRだけを阻害するが、肝臓では濃度が低すぎてFXRに何らの影響も及ぼさない。Gonzalezたちは、いくつかの実験を行って、5匹のマウスにGly-MCAを投与し、その結果、肥満マウスの体重増加が抑制され、代謝機能が改善されたことを明らかにした。
また、Gonzalezたちは、Gly-MCAがもたらす有益な効果が、いわゆる「ベージュ」脂肪細胞の熱産生の増加によるものであることも明らかにした。この現象は、腸細胞内での脂質分子(セラミド)の産生量の減少の結果として生じている。
Gonzalezたちは、Gly-MCAが代謝性疾患の有望な治療薬候補であり、マウスを用いた研究がヒトの治療法の開発に役立つ可能性があるという見解を示している。
doi:10.1038/ncomms10166
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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