イネの収量を増加させるための標的を3組の研究チームが発見した
Nature Plants
2015年12月22日
イネの穀粒サイズと収量を制御する新たな分子モジュールが、今週のオンライン版に掲載される3編の独立した論文で発表される。3組の研究チームは別々の方法を用いて、生育調節因子(GRF)が小型のRNA分子miR396によって抑制されること、およびともにその両者が穀粒のサイズと数の両方を制御することを明らかにし、それが将来の作物収量を大幅に増加させるための標的となる可能性を示唆した。
イネの収量は2通りの方法で増加させることができる。それは、植物体の花または小穂の数を増加させて穀粒の数を増やす方法と、個々の穀粒を大型化させる方法である。
1編の論文では、ハイブリッドライスの小穂数が親株よりも多くなる理由を、Shaoqing Liたちが調べた。研究チームは、ハイブリッドではmiR396の発現が阻害され、そのためにmiR396によるGRF6遺伝子の抑制が解除されることを発見した。その結果として亢進したGRF6の発現は、小穂の発達を促進する植物ホルモンの生合成とシグナル伝達を活性化させることが分かった。
別の2組の研究では、Chengcai Chu、Mingfu Zhaoたちと、Yunhai Li、Xudong Zhuたちが、いずれも粒重を大幅に増大させる2種類のGRF4を発表している。このタイプのGRF4には、miR396の抑制に対する感受性を喪失させる変異が含まれることが分かった。Chuのチームは、亢進したGRF4の発現が別種の植物ホルモンの応答を活性化させ、それによってさらに穀粒の発達が促進されて穀粒サイズが増大することを明らかにした。Yunhai Liのチームは、GRF4が転写コアクチベーター(遺伝子発現の活性化を支えるタンパク質)と相互作用することによって穀粒サイズと粒重を増大させることも明らかにした。
総合すると、この3件の研究成果は、miR396-GRFモジュールが複数の分子経路によって米穀の収量を制御しており、GRF6とGRF4が、いずれもmiR396に制御されているとはいえ、別々の機構で米穀の収量を増加させることを明らかにしている。この知見は、将来の高収量イネ系統の育種を導く助けになると考えられる。
doi:10.1038/nplants.2015.196
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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