【惑星科学】エアロゾルによって上昇する木星の大気温度
Nature Communications
2015年12月23日
エアロゾルという微小粒子(通常の大きさは直径1 μm未満)が木星の大気中で熱源になっていることを示す証拠を公表する論文が、今週掲載される。エアロゾルの凝集体が、木星の大気に吸収される太陽放射の量に大きな影響を与え、これまでの木星の大気モデルで説明されていなかった熱源である可能性がある、という見解が示されている。
地球の大気においてエアロゾルは重要な役割を果たしており、地球の表面に出入りする太陽放射の量と地球の気候に影響を及ぼすが、巨大惑星の気候に対する影響はこれまでのところ解明されていない。
今回、Xi Zhangたちは、NASAの宇宙探査機(ボイジャー、カッシーニ)の観測結果を用いて、木星の中層大気におけるエネルギーの出入りの均衡がガスのみによって維持できないことを明らかにし、エアロゾルが主要な役割を果たしているという考えを示している。Zhangたちは、分厚いエアロゾル層が、入射する太陽放射との相互作用によって、木星の中層大気における熱源の大部分を占めていると考えている。また、Zhangたちは、炭化水素化合物が集合し、凝縮してエアロゾル粒子または煙霧粒子を形成し、中高緯度で太陽熱を吸収し、木星の大気温度を上昇させ、その一方で、太陽光を反射して大気を冷却している可能性があるとも考えており、これらの結果に基づいて、木星の大気のエネルギー領域が地球とは異なっているという見方を示している。
この研究は木星を対象としたものだが、太陽系の他の惑星(例えば土星、天王星、海王星)だけでなく太陽系外惑星の大気を解明する上で役立つ可能性がある。Zhangたちは、エアロゾルの凝集体が他の巨大惑星における気候変動と太陽からのエネルギーの分布に影響を与え、初期地球の大気にとっても重要な存在であった可能性があるという考え方を示している。
doi:10.1038/ncomms10231
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