気候変動の緩和とクリーンエネルギーを利用する権利のバランスをとる
Nature Energy
2016年1月11日
厳しい気候変動抑制目標の追求は、健康への悪影響があるにもかかわらず、南アジアのかなりの数の人々を旧式のかまどに依存させ続けることになる可能性があるとの報告が掲載される。この気候変動緩和政策とクリーンな調理用燃料を利用する権利のトレードオフ分析は、開発目標を考慮する補完的な政策を慎重に設計する必要があることを浮き彫りにしている。
世界の多くの地域で、人々はまだ、薪や木炭のような固体燃料を燃やすことに頼って調理や暖房を行っている。南アジアは、固体燃料を利用している人々の数が最も多く、こうした燃料の不完全燃焼による家庭の大気汚染が、毎年170万人の早死の原因となっている。2030年までに近代的なエネルギーサービスの普遍的な利用を実現するために、グローバルプログラムが作られた。このプログラムには、灯油や液化石油ガスなどの石油燃料のコストを減らすことを目的とした、補助金などの介入が含まれている。
Shonali Pachauriたちは、南アジアにおける気候変動緩和政策とクリーンエネルギーの利用政策の相互作用を調べ、さまざまな目標が互いにどのように影響を及ぼすのかを明らかにしている。Pachauriたちは、さまざまな利用政策に対して、複数のグループのエネルギー需要を収入と調理用燃料を選択肢としてモデル化し、気候政策が燃料費に及ぼす影響を組み込んだ。その結果、最も厳しい気候変動緩和政策では、2300年までにクリーン燃料のコストが38%増加し、南アジアの4億3300万人もの人々がクリーンエネルギーを利用できないまま取り残される可能性があることが分かった。これは、補助金がどのように配分されるかにもよるが、クリーンエネルギーの普遍的利用を実現する政策にかかるコストが最大で44%増える可能性を意味している。Pachauriたちは、慎重な政策設計によって、気候緩和に伴って増える利用コストを部分的に相殺できる可能性があると示唆している。
doi:10.1038/nenergy.2015.10
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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