【健康】脂肪細胞から分泌されるタンパク質で前立腺がんが進行する恐れ
Nature Communications
2016年1月13日
マウスの研究で、脂肪細胞から分泌される特定のタンパク質が前立腺がんの進行に重大な役割を果たしていることが明らかになった。今回発見された機構は、肥満が前立腺がんの悪性度に影響を及ぼすとする学説をさらに裏付けるものであり、新たな前立腺がん治療法の開発を促進するかもしれない。この研究の詳細を報告する論文がこのたび掲載される。
悪性前立腺がんのリスクが高まることと肥満の関連を裏付ける証拠が積み上がってきているが、その基盤となる機構は、これまでのところ解明されていない。
今回、Catherine Mullerたちは、培養したマウスとヒトの脂肪細胞からCCL7タンパク質が分泌されること、前立腺がん細胞が発現するCCR3受容体にCCL7が特異的に結合すること、そして、この結合が、前立腺がん細胞の移動と播種の引き金になっていることを明らかにした。そして、Mullerたちは、約40匹のマウス(高脂肪食を与えたものと通常の食餌を与えたものが混在)を対象とした研究を行い、肥満マウスは脂肪組織が多いために前立腺がん細胞の局所浸潤が増大することを見いだした。また、Mullerたちは、組織標本から得たヒト前立腺がん腫瘍でのCCR3受容体の発現が、悪性前立腺がんと前立腺周囲脂肪組織の前立腺から外へのがん細胞の移動と関連していることを明らかにした。
Mullerたちは、今回のマウスを使った研究結果を将来的な前立腺がん患者向けの治療薬の開発に利用できる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms10230
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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