【生物科学】動物実験をせずに化学毒性を予測する方法
Nature Communications
2016年1月27日
細胞を用いる方法によって、動物実験を行わずに人体に対する化合物の毒性を予測できることを明らかにした論文が、今週掲載される。この論文に示される細胞を用いた毒性モデルは、従来の動物実験の代わりに化合物の毒性を測定する方法の開発に役立つ可能性がある。
今回、Ruili Huangたちは、殺虫剤、工業用化学品、食品添加物、医薬品などの化合物の毒性を調べる方法の改良を目指すTox21プロジェクトの一環として、1万種以上の化学物質の試験を行った。具体的には、30種の標的(例えば、ヒト細胞の核内受容体や細胞経路)と相互作用する化学物質の濃度を15段階設定して、その活性を調べた。その結果、Huangたちは、5000万データポイントを生成し、化学物質の構造に関するデータを組み合わせて、化合物が動物や人間の健康に及ぼす悪影響を予測するために使用できると考えられる毒性モデルを作り出した。
そして、Huangたちは、以上の結果を動物実験による毒性データや既知のヒトへの暴露影響によって得られた毒性データと比較して、Huangたちの毒性モデルを使ってヒトと動物の両方に対する毒性を予測できることを明らかにした。これらの結果については、より多くの経路と標的を用いて検証を行う必要があるが、Huangたちは、この細胞を用いる方法を毒性試験に利用でき、さらに詳細な毒性試験を行うべき化合物の優先順位をつける上で役立つ可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms10425
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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