【地球科学】南極氷床の表面下に隠された隕石
Nature Communications
2016年2月17日
南極氷床の表面下に鉄を豊富に含む隕石がまとめて隠されている可能性を指摘する論文が、今週掲載される。この論文では、初期太陽系の形成過程の主要な指標である隕石が、氷表面下数十センチの見えないところに捕捉されている可能性が示唆されている。
隕石は、地球の表面上に均等に降り注ぐが、これまでに世界中で採取された隕石試料の総数の約3分の2以上(約35,000点)が南極で回収されている。その主たる理由は、氷床の深い部分に数百年間埋もれていた隕石が氷の流動力学によって氷表面の局所的領域(Meteorite Stranding Zone、MSZ)に運ばれて、効率的に回収できるようになっていることだ。ところが、地球上で見つかった鉄を豊富に含む隕石のうち、南極で発見されたものの数は最も少ない。これほどはっきりと数が少ない理由は、これまで明らかになっていない。
今回、Geoffrey Evattたちは、鉄を含む隕石が南極で見つかりにくい理由として、夏季に太陽光がMSZの透明な氷に差し込んで、鉄を豊富に含む岩石の温度が非金属岩石の温度より高くなることを挙げている。Evattたちは、そうした温度上昇で、周囲の氷がとけて隕石が沈降し、1年間の氷の上昇流が相殺されて、氷の表面下に岩石が永久的に捕捉されるという仮説を示している。Evattたちは、室内実験と数理モデルを組み合わせて、MSZに埋没している(例えば鉄を含むために)熱伝導率が十分に高い隕石の1年間の上方への輸送が、通常、解凍と凍結の過程によって打ち消され、その間に熱伝導率の低い隕石が氷の中から出現することを明らかにした。
今回Evattたちが明らかにした選別機構は、MSZの氷面下数十センチメートルの複数の氷の副層に鉄分の豊富な隕石が含まれている可能性を示しており、もし採取できれば、初期太陽系の形成について解明を進める上で役立つかもしれない。
doi:10.1038/ncomms10679
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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