【神経科学】脳の力で車椅子を動かす
Scientific Reports
2016年3月3日
ワイヤレス・ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)によってサルが車椅子ロボットの動きを制御できるようになったことが記述された論文が、今週掲載される。将来、これに類似したBMIを使って、重症の麻痺患者の運動機能の回復に役立てられる可能性が今回の研究結果から示唆されている。
過去に開発されたBMIは、霊長類が皮質活動を利用して義肢を制御するというものだった。しかし、脳皮質に移植された微小電極から得た記録を全身の動きに変換できるかどうかは分かっていない。
今回、Miguel Nicolelisたちは、2匹のアカゲザルに多電極アレイを移植し、これによって無線で脳内の前運動皮質ニューロンと感覚運動皮質ニューロンの活動記録を得られるようにした。次に、この2匹のアカゲザルをそれぞれの車椅子ロボットに座らせて、一定の空間内を移動させ、その間、アカゲザルに車椅子の動きを受動的に観察させ、BMIデコーダーの訓練を行った。これが完了すると、アカゲザルがワイヤレスBMIシステムを使って車椅子で移動できるようにして、3つの出発点のいずれか1つから食物の報酬(ブドウ)の置かれた目標地点まで移動させてみた。その結果、このBMIがサルの脳活動を車椅子の方向性のある動きに変換して、この課題を完了できることが分かった。また、Nicolelisたちは、サルが車椅子を操縦する能力が時間の経過とともに向上したことも明らかにしたが、訓練を受けたサルの脳構造が変化したことが関係している可能性もある。
doi:10.1038/srep22170
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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