世界の乾燥地帯と湿潤地帯で見込まれる極値降水量の増加
Nature Climate Change
2016年3月8日
世界の極めて乾燥した地帯と湿潤な地帯において陸域の極値降水量が増加しており、21世紀末まで増加し続ける可能性が高いことを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この極値降水量の増加に伴う洪水の恐れに対する備えができていない可能性のある乾燥地帯にとって、今回の研究は非常に重要な意味を持っている。
地球温暖化は、湿潤な場所で湿潤が進み、乾燥した場所で乾燥が進むという傾向に従って、水循環を強めることが予測されている。ところが、このパターンが陸域に当てはまるのかどうか、そして、降水量のさまざまな側面(全降水量や極値降水量)に地域差があるのかといった論点が解明されていない。
今回、Markus Donatたちは、湿潤地帯と乾燥地帯に注目して、さまざまな気候学的地域の全降水量と極値降水量の全球的変化を調べた。そしてDonatたちは、観測結果と気候モデルを併用した結果、1950年以降、いずれの地帯でも日降水量極値が10年当たり約1~2%増加したことを発見し、この傾向が少なくとも21世紀末まで続くことを示す気候予測を明らかにした。Donatたちは、こうした結果が気温の上昇に伴う大気中の水分含量の増加と直接関連しているという見方を示し、極値降水量の増加に適応する対策が全球スケールで必要であり、極値降水量の増加への備えのできていない乾燥地帯で特に緊急を要すると結論づけている。
同時掲載のNews & Views記事で、William Ingramは次のように述べている。「極端な気象現象が本質的にまれであることを考えれば、この研究結果から特定の地域で実際に起こることを知ることはできないが、危険がどのように変化するのかは分かる。これこそが緊急時対応計画の策定者がまさに必要としている情報なのである」。
doi:10.1038/nclimate2941
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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