Research Press Release

【化石】イルカ似の爬虫類を絶滅に追い込んだ気候変動

Nature Communications

2016年3月9日

イルカ似の象徴的な爬虫類である魚竜類の絶滅の原因は気候の不安定と進化速度の低下だったことを示唆する論文が掲載される。魚竜類が絶滅したのは今からおよそ9000万年前の白亜紀後期で、恐竜が全滅し、哺乳類が食物網を支配する道を開いた白亜紀末期の大量絶滅の約2800万年前のことだった。

他の海生爬虫類との競争の激化、あるいは食物資源の減少が、魚竜類の早期絶滅の原因だった可能性があるという考えが示されているが、最近の研究では、魚竜類が、絶滅の数百万年前までは多様性の高い種だったことが示唆されている。魚竜類の絶滅の全体的原因は、今日まで解明されていない。

今回、Valentin Fischerたちは、系統発生学的方法を用いて、魚竜類の多様性の経時変化を推定し、その推定結果と環境データ(例えば、海洋の化学組成と海水準の変化)を関連づけた。その結果、魚竜類が白亜紀前期を通じて多様性が非常に高く、絶滅寸前の魚竜類には進化速度の低下という特徴があったことが判明した。Fischerたちのデータは、気候変動が海洋生態系の変化の主たる駆動要因だとする考え方を裏づけており、魚竜類が他の海生爬虫類と魚類との競争に敗れたという仮説とは一致しない。

さらに、今回の研究では、それよりも早期の絶滅現象(およそ1億年前)によって魚竜類の多様性が低下したことが明らかになった。以上のことからFischerたちは、魚竜類が2つの段階を経て絶滅したという考えを提案している。

doi:10.1038/ncomms10825

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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