統合失調症に関連するまれな単一遺伝子変異
Nature Neuroscience
2016年3月15日
統合失調症とその他の神経発達障害のリスクを高める単一遺伝子変異について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究で、まれな機能障害性変異のある単一のリスク遺伝子が統合失調症患者において初めて同定された。統合失調症以外のさまざまな統合失調症関連疾患が同じ遺伝子の類似の変異によって生じる過程を明らかにするには、さらなる研究が必要とされる。
統合失調症と統合失調症関連疾患は、個人の疾患リスクに及ぼす影響が小さい比較的高頻度の遺伝的変異と疾患リスクに対する影響の大きな低頻度の遺伝的変異(単一の家族や患者にしか見つからないこともある)の組み合わせが原因となって発生する。最近実施された数万人の参加者による複数の大規模研究では、統合失調症に関連する高頻度の遺伝的変異を含むゲノム領域が100か所以上同定されているが、疾患リスクに関連する低頻度変異を有する単一遺伝子を明確に同定した研究はこれまでなかった。
今回、Jeffrey Barrettたちは、英国人とフィンランド人の統合失調症患者と非患者(合計8,534人)のゲノムのタンパク質コード領域の塩基配列解読を行い、過去のスウェーデンでの統合失調症患者と非患者(合計5,074人)を対象とした研究で得られたデータと複数の家系研究による別の1,078人の統合失調症患者のデータを組み合わせた。その結果、ゲノム全体で唯一、SETD1A遺伝子の機能障害性変異が統合失調症患者に統計的に多いことがその他の者との比較によって判明した。SETD1A遺伝子は、遺伝子発現を制御する染色体の変異を調節する役割を担っている。これと同じようなSETD1A遺伝子の変異は、別の非患者45,376人においても少なかったのに対して、知的障害を含む重度の発達障害を持つ別の参加者4,281人においては多く見られた。
doi:10.1038/nn.4267
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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