【物理モデル】交通量削減への道
Nature Communications
2016年3月16日
都市部の交通渋滞を原因とする地域社会全体の移動時間の無駄は、個別の移動経路の最適化によって減らせることを示すモデルに関する論文が掲載される。移動時間の最短化を目指すドライバー一人ひとりの経路選択によって都市部の交通渋滞が悪化していることが、このモデルによって確認されている。
世界の多くの地方自治体では交通渋滞の緩和が優先課題の1つとなっているが、道路の数を増やすという対策は多くの場合に不十分であったり、現実的でなかったりしている。そのため、いくつかの取り組み(例えば、交通渋滞税、別の交通手段、自動車の相乗り、道路の車線の割り当て)が実施されており、それによって個人の行動を変え、全体的な利益を得ることを目指している。
今回、Marta Gonzalez、Serdar Colakたちは、数百万人分の匿名の携帯電話データと地域的な道路ネットワークデータを照合して、5つの都市部(ボストン、サンフランシスコ湾岸地帯、リオデジャネイロ、リスボン、ポルト)における人々の移動効率を分析した。この研究では、交通のパターンがモデル化され、ドライバーが情報不足かつ非協調的な状態で(いわゆる「利己的に」)移動の選択をすると、都市部の交通が最適な状態にならないことが明らかになった。Gonzalezたちの推定によれば、交通渋滞による全体的な移動時間の無駄は、個別の移動経路の最適化によって平均で最大30%減らせるとされる。そのためには、少数のドライバーの移動経路を変えて個々の通勤時間を延ばして、交通渋滞の緩和を図る必要があると考えられる。
ただし、Gonzalezたちは、このモデル系によって都市部全体での交通渋滞が緩和される一方で、一人ひとりのドライバーの通勤にかかる時間が平均でわずか1~3分しか短縮されない点にも注意すべきだと述べている。
doi:10.1038/ncomms10793
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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