過去6600万年間には見られなかった炭素放出速度
Nature Geoscience
2016年3月22日
5580万年前の急激な温暖化期における炭素放出速度は、現在の人為的な放出よりも10倍遅かったという報告が今週のオンライン版に掲載される。この研究は、炭素が大気中に放出されている現在の速度は、少なくとも過去6600万年の間には例を見なかったものであることを示している。
暁新世-始新世温度極大期(PETM)として知られている急激な温暖化の際には、大量の温室効果ガスの放出により少なくとも5℃の全球温暖化が起きた。PETMは現代の気候変動と最もよく似ていると考えられているが、PETM時における実際の炭素放出量と速度を決定することは困難であった。
Richard Zeebeたちは、海洋堆積物に記録されている炭素放出の時期と気候変動の時期とを比較し、両者が基本的には同じ時期に起きていることを見つけた。気候および炭素循環のモデルを用いて、Zeebeたちは、そのようなほぼ同時期に起きた変化から、PETMの炭素放出が現代では毎年約100億トンであることに対し、少なくとも4000年間にわたり毎年6~11億トンの間の速度で起きたことが伺えると示している。
同時掲載のNews & Views記事でPeter Stassenは、「PETM放出がZeebeたちが提案しているような遅い時間スケールで起きたのならば、遠海の海洋生態系は移動や進化によって環境変動に適応するために十分な時間があった可能性がある。従って、現在の変化の速度は、現代の海洋生態系とその構成要素の適応容量を凌駕している可能性は残っている」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2681
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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