心臓機能に影響する遺伝的多型
Nature Genetics
2010年1月11日
心拍数やその他の心電図測定値に影響する遺伝要因が、3つの独立した研究によって同定された。この研究成果は、心臓の電気的活動に影響する高頻度の遺伝的多型に関して新たな知見をもたらすもので、Nature Genetics(電子版)に掲載される。
心伝導速度は、電気インパルスが心臓を伝わる速度を表す。また、心電図(ECG)は、心伝導系の機能を評価し、心拍数の変動を調べるために用いられる一般的な臨床検査である。心拍数は、通常、「毎分何回」で表されるが、ECGで得られるその他の測定値は、心臓周期における特定の段階の時間的長さを示している。正常に拍動している心臓では、電気信号は、まず右心房から左心房に伝わり、これがECGではP波で示される。その後、この電気信号が心室収縮を引き起こし、これはQRS時間に対応する。そして、P波の始まりからQRS時間の始まりまでの時間の長さをPR間隔という。
デコード・ジェネティクス社(アイスランド・レイキャビク)のH Holmらは、約20,000人のヨーロッパ系の人々についてゲノムワイド関連解析を行い、心拍数に関連する多型としてMYH6遺伝子に位置する多型を同定した。また、TBX5遺伝子とSCN10A遺伝子にそれぞれ位置する多型が、 PR間隔とQRS時間の両方に関連していることも見いだした。また、ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)のJ Chambersらは、6,543人のインド系アジア人についてゲノムワイド関連解析を行い、SCN10A遺伝子に位置する上述の多型がPR間隔にも関連することを見いだした。 Chambersのチームは、6,243人のインド系アジア人と5,370人のヨーロッパ系の人々で再現試験を行い、SCN10A遺伝子に位置する多型が心臓伝導時間の延長に関連することを確認した。さらにミュンヘン・ヘルムホルツセンター(ドイツ・ノイヘルベルク)のA Pfeuferらは、 28,517人のヨーロッパ系の人々のゲノムワイド関連解析データのメタ解析を行い、PR間隔に関連する9つの遺伝子座(TBX5遺伝子とSCN10A遺伝子の座位を含む)を同定したことを報告している。
doi:10.1038/ng.511
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