【動物学】分かち合いはリカオンの狩猟に極めて大事
Nature Communications
2016年3月30日
森林地帯に生息する絶滅危惧種のリカオン(Lycaon pictus)は、何度も短距離ダッシュして狩猟を行うが、個別の成功率は低い。ところが、リカオンは同じ群れの仲間が仕留めた獲物を分かち合うことでエネルギーの無駄を補っていることが明らかになった。この研究結果を報告する2編の論文が掲載される。
追跡型捕食者は、獲物の追跡に大量のエネルギーを消費するが、数多くの個体による協調的狩猟によって大型の獲物を殺して分かち合うことができれば、高いエネルギー要求量を相殺できる可能性がある。リカオンは、効率的な協調的狩猟者の適例と考えられており、これまでに広大なサバンナにおいて協調的な集団内で大型の獲物の長距離追跡を比較的遅い速度で行っているところが記録されている。しかし、現在、リカオンの集団は、樹木がうっそうと茂ったサバンナでのみ生息しており、この狩猟戦略が奏功しているのかどうかが明らかでなかった。
今回、Alan Wilsonたちは、ボツワナにおいて群れで生息する6頭のリカオン全てに高分解能データの得られるGPS首輪を取り付けて、5か月以上にわたって狩猟に出かけた個体の動きを追跡観察した。すると、従来の学説に反し、個体間の協力行動や長距離の狩猟を示す証拠はほとんど得られず、大部分の追跡行動は、短距離ダッシュであり、殺傷率は約15%と比較的低かった。つまり、100回の追跡で仕留めた獲物は15匹ということだった。
Wilsonたちのもう1編の論文では、エネルギー収支モデルを用いて、リカオンの狩猟戦略のエネルギーコスト(対効果)が推定され、こうした高コストの追跡が、群れの中で仕留めた獲物を分かち合うことによって相殺されていることが明らかにされた。Wilsonたちは、殺傷率が高い(約26%)がエネルギー要求量の高いチーターの短距離ダッシュによる追跡行動とリカオンの狩猟戦略とを比較して、リカオンの狩猟自体は狩猟の費用対効果の点でチーターの効率の約半分だが、群れによるリカオンの狩猟はチーターの狩猟の約3倍の効率になっていることを明らかにした。今回の2つの研究からは、リカオンがこれまで考えられていたよりも撹乱に強いエネルギー戦略を持っており、こうした柔軟な狩猟行動は、不利な生息地での継続的生存にとって非常に重要となりうることが示唆されている。
doi:10.1038/ncomms11033
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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