【健康】異種心移植による生存期間の長期化
Nature Communications
2016年4月6日
免疫抑制剤を用いる効果的な治療法によってブタの心臓を移植されたヒヒの生存日数の新記録が樹立されたことを報告する論文が、今週掲載される。今回の手術では、ヒヒの心臓をブタの心臓に置き換えるのではなく、ブタの心臓をヒヒの循環系につないだ。その結果、ブタの心臓は2年以上鼓動を続けた。
異種移植(異なる種間での臓器移植)は、臓器移植患者にとっての臓器不足の問題を克服できる可能性がある。ところが、異種移植の主な障害は、移植患者が強い免疫反応を示して、移植された臓器の拒絶反応と機能不全が起こることだ。臓器拒絶反応を防ぐ方法の開発が進められてきており、例えば、臓器提供者の免疫応答関連遺伝子の操作や移植患者に投与する免疫抑制剤の開発が行われてきた。
今回、Muhammad Mohiuddinたちは、すでに確立された系統のブタのドナーを用い、ヒトに近縁なヒヒに対する移植手術を行った。この系統のブタには3か所の遺伝的改変が施されており、レシピエントのヒヒにおいて一定程度の免疫寛容が誘導される。Mohiuddinたちは、抗体と薬剤を用いた治療法を微調整して、ヒヒの免疫系を制御した。今回の研究では、5頭のヒヒにブタの心臓を移植し、レシピエントが免疫抑制療法を受けている間は、移植された心臓は生き続け、その期間は最大945日(中央値298日)だった。
この研究で示された「免疫調節」療法については、今後、ヒヒの心臓の代わりに遺伝子組換えブタの心臓を移植する状況下で検証する研究が残っている。
doi:10.1038/ncomms11138
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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