気候変動による金融資産の損失予想
Nature Climate Change
2016年4月5日
気候変動のために世界の金融資産に2.5~24.2兆米ドル(約275~2662兆円)の損失が生じる可能性のあることを報告する最新の論文が、このたびオンライン版に掲載される。今回の研究では、産業革命前からの気温上昇を摂氏2度までに抑える政策を実施することで、このリスクを大幅に低減できることが判明した。
これまでの研究では、温室効果ガス排出と環境汚染を抑制する厳しい気候変動対策を定めると、気候変動に寄与する一部の資産(例えば、石油、石炭、埋蔵ガス)が過剰投資資産になることが明らかになっていた。気候変動対策にはこうした資産の使用禁止が定められているために資産価値が低下するからだ。また、気候変動は、例えば、異常気象現象による損害を通じて固定資産を直接破壊して資産の生産性を下げ、それにより固定資産の価値が減少する。しかし、金融資産自体の価値に対する気候変動の直接的影響を推定する研究は行われていなかった。
今回、Simon Dietzたちは、全世界の経済成長と世界の金融資産の価値に対する気候変動の影響をモデル化した。このモデルによれば、これまで同様の経済活動が続いた場合には、金融資産の現在の市場価格の1.8%が失われる可能性のあることが分かった。これは、約2.5兆米ドル(約275兆円)または化石燃料会社の株式の市場価格の総額の50%に相当する。一方、Dietzたちは、気候変動が予想以上に悪化すれば、最大25兆米ドル(約2750兆円)の資産が失われる可能性があるという見解も示している。
また、同時掲載のNews & Views記事で、Sabine Fuss は「そうした多大な損失は、たとえ発生確率が低くても、極めて破壊的な影響を持つことは明白であるため、投資家は、気候変動のリスクを真剣に受け止めるべきだ」と述べている。
doi:10.1038/nclimate2972
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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