Research Press Release
被害を受けやすい島嶼住民に対する乾燥度上昇の影響
Nature Climate Change
2016年4月12日
約1600万人が居住する世界の小さな島々の約4分の3で、2050年の淡水利用可能量が今より少なくなるという予測を明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。
世界の多くの地域では気候変動によって水収支(降水量と蒸発散量の差)が変化することが予想されている。しかし、気候モデルで用いられる空間分解能より小さな島々(例えば、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、小アンティル諸島)についての評価は難しかった。乾燥度を評価する標準的な方法は、可能蒸発散量(地表と植物の葉からの蒸発による水分の損失)に対する降水量の比率を計算することだが、全球大気循環モデルを使った場合に降水量の推定はできるが、可能蒸発散量の推定はできないため、この方法を小さな島々には使えないのだ。
今回、Kristopher Karnauskasたちは、この問題を克服するため、小さな島々での可能蒸発散量を推定する方法を用いて、全世界に分布する80の諸島について乾燥度変化指数(ACI)を計算した。その結果、これらの諸島の73%以上で乾燥度が上昇する傾向が認められた。また、これらの諸島の約半数(ほとんどが熱帯海洋上の諸島)で降水量の増加が予想されているものの、ほぼ全ての諸島で可能蒸発散量が増加しており、世界の島嶼地域の淡水収支において乾燥度が上昇する傾向にあるとKarnauskasたちは結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2987
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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