【生態】将来の食料供給と森林
Nature Communications
2016年4月20日
世界中の森林をこれ以上耕作地に転換させなくても将来的に世界の人々に食料を供給できる可能性を示唆するモデルについて記述された論文が掲載される。菜食主義、完全菜食主義といった食生活の選択の場合に、森林を保全するための選択肢が最も多いことも明らかになった。
世界の人口が急増しているために食料需要が高まっているが、農業の効率向上や作物栽培のための土地の総面積を増加させることで対応できる可能性がある。しかし、生物多様性の高い森林生息地が農地に転換されると、耕作地の拡大が保全目標と矛盾する可能性がある。
今回、Karl-Heinz Erbたちは、現在の地球上の森林地帯を農地に転換せずに、2050年に世界の人々に食料を供給することの実現可能性を検討した。Erbたちは、作物収量と各地域の土地利用、人間の食生活の選択の差異に応じて異なる500種類の将来シナリオにおける農業バイオマスの供給と需要をモデル化して、森林地帯を侵食しなくても大半のシナリオが実現可能であることを明らかにした。
もし世界の全ての人々が完全菜食主義になれば、全てのシナリオが実現可能となり、菜食主義であれば、94%が実現可能とされる。そして、平均的な食事が現在と同じであれば、シナリオの約3分の2が実現可能となり、ぜいたくな肉中心の欧米型の食事が採用されれば、実現可能なシナリオがわずか15%になるとされる。以上の結果は、森林地帯を伐採して農地に転換することなしに将来的に世界の人々に対して食料を持続的に供給するための選択肢が幅広く存在しているが、こうした選択肢が食生活の選択に強く依存していることを示している。
doi:10.1038/ncomms11382
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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