【気候科学】急速につながる海洋表層がプランクトンの移動を助けている
Nature Communications
2016年4月20日
全球の海洋表層が急速につながっているために、プランクトン群集の気候変動への適応力が高まっている可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、海洋表層にランダムに位置する2つの部分が表層流によって10年未満の時間スケールでつながっている可能性のあることを示唆している。
全ての海洋食物網の底辺をなすプランクトン群集が将来的な気候変動にどの程度適応できるのかは、いまだに解明されていない。プランクトン群集の分散と隔離には限りがあるため、プランクトン群集とその進化は、環境条件の変化に翻弄されると主張する者がいる一方で、全球的海洋表層の相互接続性のためにプランクトン群集が相対的に有利な条件の海域へ移動できるようになっていると主張する者もいる。
今回、Bror JonssonとJames Watsonは、全球海洋表層の接続性を定量化するために、高分解能海洋モデルに粒子を加えて、その移動速度と移動軌跡を100年にわたって追跡観察した。その結果、全ての出発地点について1,150の目的地との最短接続時間のデータセットが得られ、全球海洋全体にわたって欠落している経路を同定し、計算する特異的な「最短経路」アルゴリズムを適用することで完成させた。JonssonとWatsonは、全球海洋表層の異なる地域が約10年以内に接続したことを明らかにした。このことは、プランクトン群集が気候変動の圧力下で移動できる可能性のあることを示唆している。
今回の研究で、JonssonとWatsonは、物理的接続性の時間スケールのみを調べ、その他の栄養素の利用可能性や海水温勾配の変化などの環境要因を考慮に入れていない。こうした環境要因は、海洋生物群集が気候変動に適応する能力に影響を及ぼす可能性が高い。
doi:10.1038/ncomms11239
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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