Research Press Release
【生物学】糖尿病患者由来のインスリン産生細胞がマウスの体内で正常に機能する
Nature Communications
2016年5月11日
1型糖尿病患者の細胞から生成されたインスリン産生細胞であるβ細胞がマウスの体内で正常に機能することを報告する論文が掲載される。今回の研究で、1型糖尿病患者(3人)の皮膚細胞に多能性を誘導してからβ様細胞に再プログラム化し、マウスに移植したところ、β様細胞の機能(インスリンの産生と血糖値の調節)が維持されたことが判明した。わずか3人の患者に由来する皮膚細胞では、1型糖尿病の多様性の全貌が反映されていないかもしれないが、今回の研究結果は、糖尿病の理解をさらに深める上で役立つ可能性がある。
今回、Douglas Meltonたちは、3人の糖尿病患者の結合組織の細胞を採取し、Meltonたちや他の研究者グループによって確立された方法を用いて、β様細胞に再プログラム化し、正常に機能するβ細胞と機能的活性の比較を行って、こうした皮膚細胞から正常に機能するインスリン産生細胞を生成できるのか、またはそうした細胞が疾患状態の情報を保持しているのかどうかを調べた。その結果、患者由来のβ様細胞が十分に機能しており、培養細胞の場合と3~5匹のマウスからなるグループに移植して数か月にわたって評価を行った場合のいずれでも、グルコースに応答し、インスリンを分泌したことが判明した。
まだ臨床応用は遠い先の話だが、今回の研究は、糖尿病治療のための今後の細胞置換療法研究と新薬のスクリーニング方法の開発に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms11463
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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