複数の形質に影響する遺伝的バリアント
Nature Genetics
2016年5月17日
2種類以上のヒト疾患や形質に影響を及ぼす遺伝的バリアントの研究が行われた。その結果、一見無関係な2つの形質(例えば片頭痛と冠動脈疾患)の間で、基盤となる遺伝学的要因に部分的重複が見られうると分かった。他の形質に因果的影響を及ぼす形質についても、いくつか同定された。
ゲノムワイド関連解析を実施すると、1つの形質と統計的に関連する遺伝的バリアントが同定でき、またこのバリアントはその形質の原因に関与している可能性がある。複数の形質に関連するバリアントが分かった場合、そのことから遺伝子の分子レベルの機能が推定できたり、形質間の関係に関する手掛かりが得られたりする。しかしこれまでの研究では、関連があるだろうと考えられていた形質が研究対象であることがほとんどだった。
今回、J Pickrellたちは、大規模なデータセットが存在する形質や疾患42種類についてゲノムワイド関連解析データを解析して、遺伝学的な重複を同定した。こうした形質や疾患には、計測的形質(例えば、身長、BMI、鼻の大きさ)、神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、感染症への感受性(例えば、小児の耳の感染症、小児扁桃摘出)が含まれている。その結果、2つ以上の形質と関連するゲノム多様性部位が341か所判明した。例えば、少女の初潮年齢(思春期の開始を示す)が遅いことに関連するバリアントがいくつか見つかったが、これらは少年の声が低くなる年齢の遅いこと、BMIが低いこと、男女両方における身長の増加、男性型脱毛症のリスクの低さにも関連していた。また、今回の研究では、これらの関連形質において思春期の開始時期が因果的役割を果たすことを統計的根拠とともに示した。
さらにPickrellたちは、統合失調症と2種類の自己免疫疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)のリスクを高めるそれぞれの遺伝的バリアント間の関連が小さいことも発見した。
doi:10.1038/ng.3570
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