【神経科学】母親が子どもの食物選択に影響を及ぼす際の神経機構
Nature Communications
2016年5月25日
子どもが何を食べるかを決める時には、母親が子どものために選ぶ食べ物を推測し、考慮に入れていることが確認された。また、子どもが食べ物を選ぶ際に活性化する脳の特定領域も正確に突き止められた。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
小児期に決めた食べ物によって一生の健康に関する行動パターンが確立してしまうことがある。しかし、小児期の意思決定(食物選択を含む)の基盤となる神経機構については十分解明されていない。
今回、Amanda Bruceたちは、行動試験と機能的磁気共鳴画像(fMRI)データを併用して、25人の小児被験者(8~14歳)が食べ物を選択する際の行動と脳活動を調べた。Bruceたちは、食品の画像を使って、60種の食品(例えば、リンゴ、ブロッコリー、フライドポテト、マシュマロ)のそれぞれについて、25人の被験者に味と健康関連特性の格付けをさせ、さらに、自分がどの程度食べたいと思うか(本人の食物選択)を答えさせた上で、母親が被験者に食べさせるために選ぶ可能性の程度を推測させた。この試験結果を行動モデルに組み込んだところ、被験者の食物選択は被験者本人の味の格付けと母親の食物選択の推定結果を組み合わせた結果だとする説明が最も的確であることが分かった。さらにfMRIデータからは、報酬価値に関係する脳領域である腹内側前頭前野(vmPFC)の活性化が被験者本人の食物選択と相関し、自己制御(セルフコントロール)に関係する脳領域である左の背外側前頭前野(dlPFC)の活性化が(被験者が推定した)母親の食物選択と相関していることが明らかになった。
今回の研究では、小児被験者が自分の好みの食品を選択する時に、dlPFCがvmPFCにおける脳活動に対して阻害的影響を及ぼすことも分かった。以上の結果は、介護者の好みが発育中の子どもの意思決定を制御するように神経レベルで作用する可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms11700
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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