Research Press Release

温室効果ガス排出量を抑制しないと温暖化が今以上に深刻化する

Nature Climate Change

2016年5月24日

地球上に残っている化石燃料資源は、二酸化炭素排出量5兆トン(5 EgC)に相当するが、それを燃焼し尽くすと、2300年に全球平均気温が摂氏8度ほど上昇し、北極の平均気温が摂氏17度ほど上昇する可能性があることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回のモデル研究では、地球温暖化と二酸化炭素累積排出量の線形関係が5 EgCまで維持されることが明らかになり、排出抑制策が実施されない場合には温暖化の規模がこれまでの予想を大きく上回る可能性が高いことが示唆されている。

温暖化と二酸化炭素累積排出量の関係は、2 EgCまでほぼ線形の関係を保つことがこれまでの研究で明らかになっており、単純な気候モデルを使って実施されたシミュレーションでは、累積排出量が2 EgCを超えると線形関係が崩れることが示唆されている。

Katarzyna Tokarskaたちは、一連の包括的で複雑な地球システムモデルを用いて、5 EgCまでの排出量に対する長期温暖化のシミュレーションを実施した。これらのモデルは、累積排出量が多い状態下で温暖化がほぼ線形に亢進し続け、全球平均気温が摂氏6.4~9.5度上昇し、北極の平均気温が摂氏14.7~19.5度上昇すると推定している。一方、これほど包括的なものや複雑なものではない地球システムモデルは、気温上昇が抑制されることを示しているが、その原因として考えられるのが、特定の過程とフィードバック(例えば、海洋による熱の取り込みの効率)が不正確に表現されていることだ。

これらのモデルでは、5 EgCになると熱帯太平洋で平均地域降水量が4倍以上増加するが、オーストラリア、地中海沿岸諸国、アフリカ南部、アマゾン川流域のさまざまな地域では2倍以上減少し、中米と北アフリカで3倍減少することが示唆されている。

また、同時掲載されるNews & Views記事でThomas Frolicherは次のように述べている。「Tokarskaたちは、二酸化炭素累積排出量に基づく規制の枠組みの強靭性が、妥当と考えられる二酸化炭素排出量について従来考えられていたよりもかなり広い範囲にわたって保持される可能性が非常に高いことを強調している。このことは、規制のない化石燃料資源の利用によって重大な気候変動の深刻化が生じる可能性を暗に示している」。

doi:10.1038/nclimate3036

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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