【環境社会科学】モンゴル軍の撤退につながった気象条件の変化
Scientific Reports
2016年5月26日
1242年にモンゴル陸軍がハンガリーから突然撤退したのは、環境要因の影響によるものだった可能性があるとした新規論文が掲載される。
モンゴルが版図拡張を始めたのは13世紀初頭のことで、1279年までにユーラシアのかなりの部分(中国、中央アジア、ロシア、イランを含む)を征服した。1242年の初頭にモンゴル軍はドナウ川を渡ってハンガリー西部に侵攻したが、その2か月後に突然撤退し始め、セルビアとブルガリアを経由する南ルートでロシアに戻っている。モンゴルの文献にこの撤退を説明する理由は記されていない。
今回、Ulf BuntgenとNicola Di Cosmoは、木の年輪データと気象条件の変動と気候に関する情報を含む文献を使って、1230~1250年の環境条件を調べた。この研究で、Buntgenたちは、1241~1242年にハンガリーで発生した気候条件が、土地の生産力だけでなく、モンゴル人が行った軍事行動にとっての地形の適性に影響を及ぼしたという考えを示している。そして、Buntgenたちは、小規模な気候の変動によってハンガリー平原全体が湿地帯のような地形となり、牧草地が減り、移動しにくくなっただけでなく、モンゴルの騎馬隊の軍事的有効性も損なわれてしまったと主張している。つまり、1241~1242年以降の気候の変化は、モンゴル軍がハンガリーに侵攻した当初の条件を変えるに十分な規模のものであり、撤退の一因になった可能性があるというのだ。
doi:10.1038/srep25606
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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