【惑星科学】月に水をもたらしたのは小惑星かもしれない
Nature Communications
2016年6月1日
月の地下に存在する水の大部分は、月の歴史の初期(約45~43億年前)に小惑星を介して運び込まれたという結論を示した新規論文が、今週掲載される。
月は、約45億年前に火星程度の大きさの惑星が地球と衝突した際に生じた残骸からできたと考えられている。形成直後の月の表面にはマグマの海(マグマオーシャン)があった。そして、月の地下には水が存在してきたことが知られている。しかし、月に水が運ばれてきた時期とその性質、それに小惑星と彗星が水の供給源としてそれぞれどれほど大きく寄与したのかは、これまでのところ分かっていない。
今回、Jessica Barnesたちは、過去のさまざまな研究で明らかにされた数値モデルと月の試料の同位体組成の測定結果を組み合わせて用い、月への水の輸送に関して、そのフラックス、供給源、時期を絞り込んだ。その結果分かったことは、月にマグマの海があった1000万年から2億年の間に水が月の地下に運び込まれたということだ。また、Barnesたちは、月の試料から得た水素と窒素のデータに基づいて、月の地下にある水のほとんどが炭素質コンドライトという水の豊富な小惑星に由来しており、彗星由来の水は月の総水収支の20%に満たないことを明らかにした。このモデルによれば、彗星と小惑星が月のマグマの海に衝突し、マグマの海の表面に形成していた伝熱性のある蓋が宇宙空間への脱ガスによる水のような揮発性物質の損失を防ぎ、その結果、月の地下に水が保持されたとされる。
以上の結果からは、大部分の水が小惑星に由来することが示唆されているが、一部の水は月を形成する衝突の際に初期地球からもたらされたものだった可能性が高いとBarnesたちは指摘している。
doi:10.1038/ncomms11684
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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