砂漠のコケは霧の機会をとらえる
Nature Plants
2016年6月7日
北半球全体の過酷な砂漠で生育する蘚類の1種が、生存に必要な水を集めるのに根ではなく葉を用いていることを、今週のオンライン版に掲載される論文が明らかにしている。その研究は、Syntrichia caninervisが水を土壌ではなく大気から直接取り出していることを示しており、この仕組みは、乾燥した環境で水を輸送・収集するシステムを改善するナノテクノロジー的技術革新を刺激する可能性がある。
サボテンのような砂漠の植物は、存在量の乏しい水を最大限に利用するための特殊な仕組みを進化させた。しかし、Tadd Truscottたちは、S. caninervisが、サボテンとは異なり、もっぱら体を地面に固定することのみに根を用い、代わりに葉に存在する長さ0.5~2 mm、直径50 μm未満の細かい毛(毛尖)を利用して必要な水の全てを捕捉していることを発見した。
研究チームは、環境走査顕微鏡とカメラを用いて葉を詳細に観察することにより、S. caninervisが水を取り込む様子を確認した。毛尖は、水を雨滴としてとらえることもできるが、水蒸気が集まって液体の水になる「凝縮」というプロセスが起こるナノスケールの場を用意することにより、霧を集めることもできることが分かった。集められた微小な水滴は、毛尖表面の微視的な鉤状毛と溝の装置によって収集され、葉の本体へ流れるのに十分な大きさの水滴となった後に葉で吸収されることが発見された。最後に、毛尖および葉の表面に残された水の薄膜がその後の迅速な水滴捕集を可能とし、水が乏しいときの収集効率を最大化していることも明らかにされた。
doi:10.1038/nplants.2016.76
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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