【進化】新生仔ザルの社会的行動にとっての対面相互作用の価値
Nature Communications
2016年6月15日
母親との対面相互作用が多い新生仔の方が後年になって社交性が高くなることがアカゲザル(Macaca mulatta)の研究で明らかになった。ヒト以外の霊長類の新生仔期における経験が社会的行動に及ぼす影響が長年にわたって持続することが示唆する論文が、今週掲載される。
ヒトの幼少期における社会性の発達を支える機構の1つが介護者と乳児との対面相互作用だ。これまでの研究では、アカゲザルの母親と新生仔との対面相互作用が明らかになっていた。
今回、Amanda Dettmerたちは、この種の母親・新生仔間のコミュニケーションの効果が長く持続することを明らかにした。この研究では、大きな野外の囲い地で飼育されたアカゲザルの母親と新生仔(10組)を対象として、相互視と断続的な唇鳴らしによって測定される対面相互作用の自然変動を追跡観察した。その結果分かったのは、生後1か月間に母親との対面相互作用が多かった新生仔の方が生後2~5か月間における(社会的遊び、他のサルとの距離の近さ、毛づくろい行動によって示される)社会的相互作用が活発だったことだ。これとは別にヒトに育てられた48匹のアカゲザルの集団を調べる実験も行われた。この実験では、無作為に選ばれた被験個体について新生仔期の飼育担当者との対面相互作用が増強された。この被験個体は、ハンドリングだけを増強した個体や対面相互作用が増強されなかった個体と比べて、生後2か月における社会に対する関心の度合いが高かった。
アカゲザルとヒトは、養育行動と社会性の発達過程に類似点があるため、今回のアカゲザル新生仔の社会性の発達に関する研究は、ヒトの発達を解明する上で役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms11940
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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