【気候科学】巻雲の冷却効果が増大するチャンス
Nature Communications
2016年6月22日
巻雲は、薄いかすかな雲で、通常は上空5,500 mより高い領域で発生するが、すでに存在している巻雲の中を航空機が通過すると、巻雲の太陽熱反射率が上昇する可能性が高いことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究によって得られた知見は、航空機が通過した後に生じる飛行機雲によって、すでに存在している巻雲の光学的厚さ(雲によって太陽放射の透過率が変化する程度)が増し、その結果として、すでに存在している巻雲の冷却効果が増大することを示している。
雲が気候に及ぼす影響は、雲の光学的厚さによって決まる。厚さが増すと、太陽放射の反射率が上昇し、正味で冷却効果を示すのだ。航空機が発する飛行機雲のプリュームは、光学的厚さが小さいことが明らかになっており、すでに存在している雲に対する航空機の影響の程度はいまだに解明されていない。
今回、Kevin Nooneたちは、2010年と2011年の米国西海岸・ハワイ間の主要航空路の現実の飛行経路データと雲の光学変化を検出できるCALIPSO衛星の観測結果を組み合わせた。Nooneたちは、風による輸送を考慮に入れた上で、解析対象の飛行経路における巻雲の光学的厚さが、この飛行経路に隣接する領域と比較して22%大きく、統計的に有意な差があることを明らかにした。
光学的厚さが増す機構は解明できていないが、Nooneたちは、飛行機雲のプリュームの内部に排出されるすすが核となって雲が成長するからではないかと推測している。この原因機構を解明し、これらの新知見が気候に与える影響を定量化するためにはさらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms12016
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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