【神経科学】鳥のニューロンはボイストレーナーのさえずりに応答する
Nature Communications
2016年6月22日
キンカチョウの幼鳥の脳内にある特定のニューロンは、チューターと呼ばれる成鳥(通常は父鳥)の歌(さえずり)に選択的に応答するが、他の成鳥の歌には応答しないという研究結果について説明する論文が掲載される。この結果は、鳥類の歌関連の記憶と早期学習の形成の基盤となる神経機構に関する手掛かりとなっている。
キンカチョウの幼鳥は、成鳥のチューターの歌を記憶し、正確に模倣することによって歌を歌えるようになることが知られている。この過程で必要なのは、幼鳥にとってのチューターの歌の特異的な記憶が形成されることだ。しかし、この記憶された歌に関連する神経活動パターンを示す直接的な証拠は見つかっていない。
caudomedial nidopallium(NCM)は、幼鳥の歌の学習に関係すると考えられている脳領域だが、今回、沖縄科学技術大学院大学の杉山(矢崎) 陽子(すぎやま(やざき)・ようこ)の研究チームは、20羽の雄のキンカチョウの幼鳥が歌を学習する前と歌を学習している際のNCMにおける神経活動と同齢のキンカチョウ(対照群)のNCMにおける神経活動を記録した。これらのキンカチョウには9種類の歌の刺激を与えて、NCMにおける神経応答を測定した。これらの歌の刺激には、同種の別の個体の歌や別の種の個体の歌が含まれていた。9種類の音刺激のうち、チューターの歌を聴いた後にわずかな数のニューロンの活動の上昇(いわゆる「発火」)が認められたが、その他の8種類の音刺激に対してはそのような応答が認められなかった。また、この研究チームは、9種類の歌の刺激を受けた後に歌の刺激に対する神経応答が全般的に増強し、この神経応答が神経回路(GABA作動性回路)と睡眠に依存していることも明らかにした。
こうした歌選択的ニューロンが他の脳領域と相互作用して鳥類の発達段階における歌学習を誘導する過程を明らかにするには、さらなる研究が役立つと考えられる。また、鳥類の歌システムを研究することで、ヒトの言語獲得に関する新たな知見が得られる可能性もある。
doi:10.1038/ncomms11946
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