【ウイルス】初めての非ヒト霊長類を用いたジカウイルス感染モデル
Nature Communications
2016年6月29日
アカゲザルがジカウイルスに感染しやすいことが初めて明らかになった。このほど行われた研究で用いられたジカウイルスは、アジア系統株で、南北アメリカ大陸で現在流行中のウイルス株とごく近縁な関係にある。ジカウイルス感染の新しい動物モデルを利用して、ジカウイルスの病原性発現を研究し、治療法候補を検証できることが、今回の研究結果から暗示されている。その詳細を報告する論文がこのたび掲載される。
アジア系統のジカウイルスへの感染は、南北アメリカ大陸におけるギラン・バレー症候群と胎児異常と関連づけられてきたが、その基盤となる機構はあまり解明されていない。これまでの研究で免疫不全マウスをジカウイルスに感染させる実験が行われているが、このマウスモデルは、ヒトのジカウイルス感染と胎児発生の重要な属性(例えば、免疫が正常な状態での感染)を模倣できていない。
今回、David O'Connorたちは、免疫が正常な8匹のアカゲザル(うち2匹は妊娠中)に対し、南北アメリカ大陸で現在流行しているジカウイルス株にごく近縁のアジア系統株を接種した。その結果、8匹全てがジカウイルスに感染し、そのことは、血漿、唾液、尿、脳脊髄液にジカウイルスのRNAが検出されたことで実証された。妊娠中のアカゲザルでは感染が最長57日以上続き、妊娠していないアカゲザルでは21日間感染が続いた。そして、21日目にジカウイルスに対する抗体が検出された。また、同じアカゲザルに対し、最初のウイルス接種から10週間後に同じ系統のジカウイルスを接種する実験も行われたが、検出可能な再感染は認められなかった。この結果は、アカゲザルにおいて二度目のウイルス感染を防ぐ免疫応答が成立したことを示している。
ジカウイルスに感染したアカゲザルは、このウイルスの病原性発現の研究と治療法候補の評価に適した動物モデルといえる。妊娠中のアカゲザルにおいて胎児のウイルス感染や胎児異常が起こるのかどうか、そして体液中にウイルスが存在すれば個体間のウイルス伝播が起こるのかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms12204
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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