進化:地球の古生物を待ち受けていた二重の大災害
Nature Communications
2016年7月6日
白亜紀末期の大量絶滅の始まりの原因が、よく知られたチクシュルーブ隕石の衝突より前に起こった巨大な火山噴火と膨大な量の二酸化炭素の排出だったことを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この新知見は、南極で出土した化石の詳細な分析に基づいており、絶滅のための二重の機構が数十万年間にわたって存在していたことを示している。
白亜紀と古第三紀の境界(約6600万年前)で起こった大量絶滅現象の際には、非鳥類型恐竜が地球上の生物種の4分の3とともに死滅した。大量絶滅現象の原因については、いまも論争があり、チクシュルーブ隕石の衝突を主たる原因とし、インドのデカントラップ火山地域の噴火を二次的機構とする論者が多い。しかし、これら2つの現象は、時期的に近接しており化石記録も不完全なため、区別して論じることは難しい。
今回、Sierra Petersenたちは、南極のシーモア島で得た高品質の完全な化石記録を用いて、この絶滅現象についての研究を行った。今回の研究では、新しい地球化学的方法(炭酸塩凝集同位体による古水温推定)によって、白亜紀と古第三紀の境界に生存していた軟体動物の殻に記録された気温の変化を正確に計算した。その結果、Petersenたちは、生物種の絶滅と同時期に気温が二度急上昇しており、一度目の急激な気温上昇がデカントラップでの火山活動の始まりと同時期で、一度目よりも小規模な二度目の気温上昇は、実際の白亜紀と古第三紀の境界とチクシュルーブ隕石の衝突の時期に近かった。
Petersenたちは、白亜紀と古第三紀の境界以前に起こった絶滅現象によって生態系ストレスが増し、隕石の衝突があった時に二度目の気温上昇に対する生態系の脆弱性が増したという考えを示している。しかし、二度目の気温上昇との関係で火山活動と隕石の衝突がそれぞれ果たした役割を区別して論じるのが難しいことは変わらない。
doi:10.1038/ncomms12079
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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