【物理科学】水中のサンゴの動きを微視的に観察する
Nature Communications
2016年7月13日
自然環境で生きている海洋生物の高分解能画像が得られる新しい方式の水中顕微鏡について記述された論文が、今週掲載される。今回の研究では、生きたサンゴのビデオ映像が、これまで実現できなかった高解像度で記録された。
水中顕微鏡は、海洋環境に固有の不安定要因(例えば水流)に適応するための高精度で高速な画像化技術が必要なため、開発が難しかった。また、非侵襲的な画像化を行うには、作業距離を長くして撮影対象を撹乱させないことが必要とされる。サンゴと藻類の画像化は実験室内で可能だが、自然環境でなければ得られない情報(例えば、酸性度や気温に対する応答や周辺に存在する生物との相互作用に関する詳しい情報)が数多くある。これまでに水中で撮影された画像の最大分解能は約20~50マイクロメートルだった。
今回、Andrew Mullenたちは、作動距離の長い顕微鏡対物レンズと特定の種類のレンズと照明を用いて、ほぼマイクロメートルスケールの分解能を達成できる新しいタイプの光学顕微鏡を開発し、潜水夫がこの顕微鏡を手に持ち、海底生物系の映像を数時間にわたって記録できることを実証した。
Mullenたちは、さまざまなサンゴの縄張り争いの様子(例えば、脅威を感じたサンゴが腸のような糸状物質を素早く放出する様子)を映像に記録することで、この顕微鏡の能力を例証し、さらには藻類が白化したサンゴを覆って定着する過程の定量解析も行った。この水中顕微鏡は、海洋環境が変化する際の生態学的相互作用に関する手掛かりを得る上で役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms12093
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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